難聴と認知症
聞こえづらさ、難聴の原因の一つに「加齢」があります。
誰もが避けては通れない加齢で、それに由来する難聴を「加齢性難聴」と呼びます。
年齢とともに聞こえを司る細胞の数の減少、耳付近の血流悪化、聴神経の機能不全などが主な原因としてあげられます。
加齢性難聴の特徴
・高い音が聞こえにくくなる
・言葉の聞き取りが難しくなる
・騒音の多い場面で聞きたい音を拾い上げることができなくなる
の3つが代表的な特徴です。
加齢性難聴は「感音性難聴」というものに分類されます。
一般的な難聴のイメージとしては「耳の穴に指を入れて塞いだ状態がずっと続いている感じ」と思われがちですが、全く異なります。
音が「伝わる」部分の障害ではなく、音を「聴く」部分に、問題が発生している状態です。
そのため単純に聞こえづらいのみならず「相手の声は聞こえるが何を言っているのかわからない」、「テレビの音自体は聞こえるが、内容がわからない」、「複数人の会話では、誰が話し手か分からず、会話についていけない」といった問題が生じてきます。
この「聞こえてはいる」の部分が補聴器をうるさいと感じ、避けたくなる要因の一つとも思われます。
加齢性難聴による弊害
自分だけが会話に入れない、社会に置いていかれたような気持ちになってしまうことから、疎外感や抑うつ傾向となる方もいらっしゃいます。
中でも近年注目されているのが加齢性難聴と認知症の関係です。
難聴により、脳への音刺激、様々な情報が減少し、それらによってもたらされていたはずの感情、記憶、情動、空間認知などが低下する場合があります。
そしてその難聴を放置することにより認知機能低下が進み、認知症発生リスクとなりうるといった研究も出てきました。
発症リスクの度合いとしては、軽度難聴で2倍、中等度難聴で3倍、重度難聴で5倍とも言われています。
加齢性難聴と補聴器の役割
補聴器は音を大きくするのみではなく、騒音を抑えたり、聞こえづらい音を様々な機能を使って聞こえやすくしたりするものです。
聴覚からの情報を補償することにより、聴覚のトレーニング=脳のトレーニングが行えます。
聞こえていない期間=脳がお休みしている期間が長ければ長いほど、トレーニングが大変になります。
「少し聞こえづらさが出てきたかな」「家族に指摘されることが少し増えた」くらいから補聴器を使い始めると、慣れるのにも時間がかかりにくいです。
また早期から脳に音刺激や言語情報を送り続けることによって、早期からの認知症予防につながります。